現代を代表するイギリス人重量級ボクサーの1人でテクニシャンとして高い人気を誇った元WBAミドル級暫定チャンピオンのマーティン・マレー。5度の王座挑戦をしており、そのうち3度の試合は世界を獲得していてもおかしくない判定で退けられています。
マレーは典型的なアウトボクサーで打ち合いでの試合はとても苦手としていたのですが、インサイドに入ってきてボディを打ち込んでくるなどヒートアップすると近い間合いでも打ち合いに応じる気の強さもあります。
基本的にはイギリスで試合をしておりましたが、ヨーロッパ圏でも世界タイトルマッチをやっており、敵地のドイツやモナコなどでも試合をしており、アルゼンチンでも世界タイトルマッチをしてますね。
そのキャリアの中ではベテランコンテンダーのガブリエル・ロサドを破っており、WBAミドル級スーパーチャンピオンのフェリックス・シュトルムにも敵地ドイツで引き分け。多くの地域タイトルを獲得しております。
負けた試合は後にWBAスーパーミドル級スーパーチャンピオンとなるジョージ・グローブス、ミドル級最強とされていたセルヒオ・マルティネスにダウンを奪っての判定負け、WBAミドル級チャンピオンのゲンナジー・ゴロフキンにはキャリア唯一のノックアウト負けをしており、敵地ドイツでWBO世界スーパーミドル級チャンピオンのアルツール・アブラハムに僅差判定負け、WBO世界スーパーミドル級チャンピオンのビリー・ジョー・サンダースには判定負けを喫しておりますな。
ということで、英国のレジェンドの彼の試合をより楽しむためにマレーの来歴をまとめてみました!!
マレーの戦歴
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マレーのプロフィール
マレーは1982年生まれでイギリスのマージーサイド州のセントヘレン生まれ。身長183センチ、リーチは185センチとこのクラスでは平均的かな。
マレーはアマチュアの頃のレコードが残っておらず、プロのキャリアで叩き上げとして頑張ってきている選手ですな。
ちなみにマレーには犯罪歴があり、体も全身刺青だらけ。この犯罪歴があるがためにアメリカでは試合ができませんな。
シュトルムのプライド高い…フェリックス・シュトルムvs.マーティン・マレー
これまでの実績
マレーは2007年にウィガンで25歳でプロデビュー。6回戦で判定勝ちを収めておりますな。
その後マレーは4回戦と6回戦をこなして2008年に大きなチャンスを迎えます。イングランドで人気のプライズファイターへの参戦です。このシリーズでテレビで試合をしたマレーの知名度は急上昇。しかも優勝まで果たしておりますな。
プライズファイターを終えたマレーはその後8回戦にも昇格。無敗のままランキングを上げて2010年にコモンウェルスチャンピオンのピーター・ミトレベスキ・ジュニアと対戦します。
ミトレベスキはオーストラリアのチャンピオンでセバスチャン・シルベスターとも対戦しているベテランでしたがマレーはコツコツジャブを当ててポイントアウト!大差判定勝ちでタイトルを獲得します。
さらに次戦ではボルトンに参戦してかつてWBOスーパーウェルター級チャンピオンのセルゲイ・ジンジルクに挑んだカルロス・ナシメントと対戦。ブラジルのハードパンチャーでしたが3ラウンドストップで下してWBAインターコンチネンタル王座を獲得します。
さらにブラジルのジョン・ソウザを下して防衛に成功すると無敗のイングランドチャンピオンのニック・ブラックウェルと英国タイトルをかけて対戦。5ラウンド棄権TKO勝ちを収めて世界タイトルマッチへと進みます。
ラフなイタリアンやね…マーティン・マレーvs.ドメニコ・スパダ
世界タイトルマッチとゴロフキン戦
マレーは2011年に初の世界タイトルマッチを敵地となるドイツで迎えます。相手はWBAスーパーチャンピオンのフェリックス・シュトルム。この試合が11度目の防衛戦となるジャバーで強豪です。
シュトルムはキャリアの中で6階級制覇チャンピオンのオスカー・デラホーヤを苦戦させており、2階級制覇チャンピオンのハビエル・カスティリェホにノックアウトされたもののリマッチで判定勝ち。セバスチャン・シルベスターやジョバンニ・ロレンソらのコンテンダーを下しており佐藤幸治をジャブだけでストップしたことでも知られてますな。
そしてこの試合は開始からシュトルムが鋭いジャブ、マレーがアグレッシブに出ての手数で対抗する素晴らしい熱戦に!個人的にはマレーがアグレッシブさで勝ったかと思いましたが判定は後半巻き返してきたシュトルムを評価してドロー!マレーは惜しくもタイトルを逃しました!
しかしマレーはこの試合で大いに評価を高めてフランスチャンピオンのカリム・アコールを判定で下して再起に成功。次戦でチャンスを掴みます。
マレーは2012年にWBA暫定王座を無敗のホルヘ・ナバーロと争うことになります。ナバーロはベネズエラのハードパンチャーでWBAフェデラテンチャンピオン。ハイメ・バルボサを下しておりますな。
そして試合は経験値に勝るマレーがナバーロを圧倒!初回からダウンさせて正確なパンチでコツコツと追い詰めるとナバーロはタジタジとなり、6ラウンドにまたもダウンさせてストップ!タイトルを獲得します!
そしてマレーは半年後に大きなチャンスを得ます。WBCチャンピオンでミドル級最強とされているセルヒオ・マルティネスとの試合です。この試合のためにマレーは暫定王座を捨てていますね。
マルティネスはアルゼンチンのテクニシャンで元WBCスーパーウェルター級チャンピオンでもある2階級制覇チャンピオン。サウスポーでスペインを拠点としており、変則的な動きを得意としておりますな。
キャリアの中では後にウェルター級統一チャンピオンとなるアントニオ・マルガリート、2階級制覇チャンピオンのポール・ウィリアムスに敗れたもののウィリアムスにはノックアウト・オブ・ザ・イヤーとなるノックアウトで借りを返しておりミドル級最強と目されたケリー・パブリック、元WBOスーパーウェルター級チャンピオンで無敗だったセルゲイ・ジンジルク、無敗だったWBCミドル級チャンピオンのフリオ・セサール・チャベス・ジュニアなどを下してきておりますな。
敵地となるアルゼンチンで行われたこの試合でマレーは大きなアンダードッグだったものの大善戦!8ラウンドにはマルティネスをダウンさせるまさかの展開となりましたがマルティネスもフットワークからのジャブを当ててきて判定は疑惑の末にマルティネス!しかしこの試合の判定は大きく議論を呼んでおり、マレーの評価はまた高まりましたな。
そしてマレーは8ヶ月後に8回戦で判定勝ちして再起。4ヶ月後にもガーナのイスマイル・テテーを下して世界タイトルマッチを待ちます。
そして2ヶ月後にマレーはモナコのカードに参戦。WBCシルバー王座をコンテンダーのマキシム・バーサクと争うことになります。バーサクはウクライナのコンテンダーでかつてWBO暫定王座をハッサン・ヌダン・ヌジカムと争って敗れておりますな。
そして試合は攻防分離のバーサクに対してマレーは手数で対抗。打てばすぐに離れるアウトボクシングでリードしてアウトボクシング!大差の判定でバーサクを下してシルバー王座を獲得します!
そして4ヶ月後マレーは再びモナコへ。イタリアのコンテンダーでセバスチャン・ズビク、マルコ・アントニオ・ルビオと3度WBC暫定王座を争っているドメニコ・スパダと対戦します。
試合はスパダが開始から突っ込んでくるラフな試合となりマレーは苦戦!しかしマレーはコツコツとジャブを当ててわずかにリードするとスパダの目の上が偶然のバッティングでカットして7ラウンドでストップ!負傷判定を制しました!
そして4ヶ月後にマレーは世界タイトルマッチを引き当てます。WBA.WBC暫定ミドル級チャンピオンのゲンナジー・ゴロフキンとの試合です。
WBA.WBC暫定チャンピオンでミドル級最強の名を欲しいままにしてきていたゲンナジー・ゴロフキンとの試合を引き当てます。
ゴロフキンはカザフスタンのハードパンチャーで全ての防衛戦をノックアウトで終わらせてきた化け物。常に前に出るプレッシャーの強いコンビネーションパンチャーでアテネオリンピックの銀メダリストです。
キャリアの中ではドイツを主戦場として元WBAスーパーウェルター級暫定チャンピオンの石田順裕をノックアウト。元IBFスーパーウェルター級チャンピオンのカシム・オウマ、WBC暫定チャンピオンだったマルコ・アントニオ・ルビオ、元WBA.IBFチャンピオンのダニエル・ゲール、コンテンダーのカーティス・スティーブンスにマシュー・マックリン、ウィリー・モンロー・ジュニア、ガブリエル・ロサドをノックアウトしてきておりますな。
そしてモナコで行われたこの試合でマレーはゴロフキンのパワーの前に終始タジタジ。4ラウンドに2度ダウンさせられた後はほとんど逃げに徹する展開となり、11ラウンドにもダウンさせられてストップ!圧倒的なパワーの差の前に破れ去りましたな。
マレーさんそれじゃ勝てんやろ…ゲンナジー・ゴロフキンvs.マーティン・マレー
スーパーミドル級コンテンダーと引退
ゴロフキンにけちょんけちょんにされてしまったマレーは再起戦を4ヶ月後にマージーサイドで行ってノックアウト勝ち。8回戦を2度クリアします。
そしてゴロフキンに負けてから半年後マレーはスーパーミドル級にウェイトをあげる決断をします。そして迎えて試合はホセ・トーレスとのWBAインターコンチネンタル王座決定戦。トーレスはコロンビアのハードパンチャーで元WBCラティノチャンピオン。デビッド・レミューとも試合をしておりますな。
そしてこの試合はマレーが開始からトーレスを圧倒!初回からどんどんダウンさせて都合7度ものダウンを奪う5ラウンドノックアウト勝ちでスーパーミドル級で世界ランキングに入ります。
そしてマレーはその2ヶ月後にチャンスを掴みます。WBOチャンピオンで2階級制覇チャンピオンのアルツール・アブラハムとの対戦です。
アブラハムは元IBFミドル級チャンピオンでもあり、ミドル級王座は10度も防衛。WBOタイトルは2度獲得しておりキャリアの中ではエディソン・ミランダ、ポール・スミス、元WBOスーパーミドル級チャンピオンのロベルト・ステイグリッツ、元ミドル級4団体統一チャンピオンのジャーメイン・テイラー元IBF世界スーパーウェルター級チャンピオンのラウル・マルケスらを撃破しておりますな。
アブラハムは攻防分離のハードパンチャーとして知られており、ヨーロピアンスタイル。スーパー6ではアンドレ・ディレルに反則負け、元WBCチャンピオンのカール・フロッチとアテネオリンピック金メダリストのアンドレ・ウォードにはなすすべなく敗れておりますな。
アブラハムの地元であるドイツで行われたこの試合はマレーが開始からガードの上からのパンチを集めてアブラハムはよりハードなパンチを返す展開に!採点の難しいタクティカルな試合となりましたがマレーはホールディングで減点されて僅差判定負け。マレー優位の判定でもおかしくない内容でしたがまたしても涙を飲みましたな。
マレーはこの後半年後に再起。マンチェスターにて8回戦を行なって5ラウンドノックアウト勝ちを収めます。
そしてマレーは英国人同士のビッグファイトをロンドンで行います。トップコンテンダーのジョージ・グローブスとの試合です。
グローブスはハードパンチャーとして知られており、カール・フロッチと2度の激戦を演じている選手。アメリカでもWBC世界スーパーミドル級チャンピオンのバドゥ・ジャックを苦戦させており、世界タイトルマッチ以外で負けたことがない選手ですね!
そして試合はグローブスが開始から長い間合いからのワンツーとジャブでパワーを生かしてリード!しかしマレーも後半にチャージしてきてヒートアップ。好試合となりましたがグローブスが前半の貯金を守って判定勝ち。グローブスは世界タイトルマッチに前進し、マレーは後退することになります。
そして5ヶ月後にマレーは再起。ナイジェリア系ドイツ人であるヌフ・ラワルとの試合を行います。ラワルはここまで無敗でWBAコンチネンタルチャンピオンですね。
WBAのインターコンチネンタル王座決定戦となったこの試合はマレーが細かいジャブとインサイドのピンチでリード!ホールディングで減点されたものの危なげなく判定勝ちして再起に成功します!
そして半年後にマレーは大きな試合を迎えます。ベテランコンテンダーでタフネスで鳴らしているガブリエル・ロサドとの試合です。
ロサドはとてもタフなフィラデルフィアのファイター。ミドル級にてゲンナジー・ゴロフキンに挑んで敗れたもののダウンを拒否しており、WBOチャンピオンのピーター・キーリンは追い詰めたもののカットによる負傷で敗退。後にWBO世界スーパーウェルター級暫定チャンピオンとなるアルフレド・アングロや後にIBFミドル級チャンピオンとなるデビッド・レミュー、コンテンダーのウィリー・モンロー・ジュニア、後にスーパーウェルター級統一チャンピオンとなるジャーメル・チャーロには負けておりますな。
そして試合はタクティカルな試合となり、地元のマレーがわずかにヒット率で上回って僅差判定勝ち!しかし試合後には言い合いになっており、後味の悪い試合となりましたな。
マレーはここから5ヶ月後に8回戦をノックアウトでクリア。9ヶ月後にWBCシルバーチャンピオンのロベルト・ガルシアとの試合を行うことになります。
ガルシアはメキシカンのパンチャーで番狂わせでオマール・チャベスを下して王座を獲得しているコンテンダーですな。
そして試合はテクニックに勝るマレーがコツコツヒットを奪ってガルシアをリード!ガルシアはラフに出てきてローブローとラビットパンチで減点されてマレーが判定勝ち。シルバー王座を獲得します。
そして次戦は半年後でマレーは正念場を迎えます。元WBA.WBO世界ミドル級チャンピオンのハッサン・ヌダン・ヌジカムとの試合です。
ヌジカムはカメルーン出身でフランスに帰化した元オリンピアン。ぴょんぴょん跳ねるようなフットワークが特徴的でこれまでピーター・キーリンやデビッド・レミュー、村田諒太と試合をしてきており、三度の世界王座を獲得している選手ですな。
そして試合はヌジカムが徹底してフットワークを駆使して時折前に出てきて手数を出してくる展開に!マレーはヌジカムをロープに吹き飛ばすダウンを奪うものの全体的には運動量で勝ったヌジカムが判定勝ち!マレーは勝利を主張しておりましたな。
36歳となっていたマレーはこの試合を最後に現役を引退することを宣言。リングを離れることになりますな。
中途半端なマレーさん…ハッサン・ヌダン・ヌジカムvs.マーティン・マレー
再起とサンダース戦
マレーはヌジカム戦で引退をアナウンスしてから半年後にカムバック。地元のマージーサイドで10回戦を行なって判定勝ち。さらに4カ月後に8回戦を行って判定勝ちしています。
そしてマレーは1年後にビッグチャンスを得ます。かつて試合が決まったものの相手の怪我で流れていたWBO世界スーパーミドル級チャンピオンで無敗の2階級制覇チャンピオンであるビリー・ジョー・サンダースとの試合です。
サンダースはサウスポーのアウトボクサーでアマチュアの頃から活躍していたエリート。プロの世界では後にWBA世界ミドル級暫定チャンピオンとなるクリス・ユーバンク・ジュニアや後にWBA世界スーパーミドル級暫定チャンピオンになるジョン・ライダー、WBOミドル級チャンピオンだったアンディ・リー、コンテンダーのウィリー・モンロー・ジュニア、元IBF世界ミドル級チャンピオンのデビッド・レミューを下しておりますな。
そしてこの試合は開始からキレキレのサンダースがマレーを圧倒!サンダースがいつもよりも手数を出してきてマレーは思うように攻め込めず、ボディを効かせれるシーンもあるなど衰えを隠せない展開となり、大差判定負け。試合後に引退をアナウンスしましたな。
すまん、マレー。引退したまえ。ビリー・ジョー・サンダースvs.マーティン・マレー
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マレーのファイトスタイル
マレーのファイトスタイルはガードを固めてロングレンジに構えて動き出しは打ち終わりにジャブを当ててくるディフェンシブなスタイルです。
マレーには残念ながら試合を一撃で決めるような華やかなパワーはありません。なのでノックアウト率も低いのですが、目に見えない地味なテクニックがうまいテクニシャンですな。
マレーが強いのは特に後半。相手が疲れてきた頃に前に出てスパークすることが多く、これは相手からしたら嫌な相手ですね。グローブスとの試合で見せたようにハードパンチャー相手の打ち合いもします。
反面ゴロフキン戦の頃から見え隠れするようになったのがメンタルの弱さ。圧倒的なパワーを持つ相手などにはなかなか踏み込めずに試合をつまらないものにしてしまう傾向にありますね。
なんか別人になったね…セルヒオ・マルティネスvs.マーティン・マレー
まとめ
いかがでしたでしょうか?どのような間合いでもパンチを打ち、どんな相手でも接戦に持ち込む力のあるマレー。正規王座の獲得は叶いませんでしたがとてもスキルの高いメジャーなファイターです。
マレーは残念ながら、世界タイトルマッチで勝利したのは暫定王座を獲得した試合のみ。それでもシュトルム戦、マルティネス戦、アブラハム戦は今でも議論を呼んでおり、マレーが勝つべきだったとされる声が多いですな。
彼のキャリアには多くの挫折がありました。しかしゴロフキンにノックアウトされても巻き返してきてアブラハムを追い詰めるなど彼の強さは素晴らしいものがあります。目立つようなボクサーではないけど彼のスキルの高さはみんなの目標ですね!
ディフェンシブなスタイルなので玄人好みのボクサーですが、彼の強さはスキルの高さ。全体的にまとまっているオールラウンダーでどんな時でも諦めない真の強さはこれからも若いファイターに根づいて欲しいものですね!
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