現代を代表するイギリスボクサーの1人でここまでのキャリアでIBFフェザー級のタイトル獲得を果たしてきたリー・セルビー。現在はライト級のトップコンテンダーとして2階級制覇を狙っている強豪です。
一発のパワーはないものの相手と真正面から打ち合いに挑んでフェザー級としてかなりストロングなフィジカルを持つセルビーはライト級でもその体の強さを生かして前に来る振り抜くパンチが魅力的なスタイル。飛び抜けたものはないもののオールラウンダーで崩し辛いタイプですね。
セルビーはIBF世界フェザー級タイトルを保持して4度の防衛に成功している一流のチャンピオン。イギリスの中でもウェールズのエリアで人気を誇っており、彼の試合はバリーの一大イベントとなっておりますね。
キャリアの中ではIBFチャンピオンだったエフゲニー・グラドビッチ、コンテンダーのエリック・ハンター、元3階級制覇チャンピオンのフェルナンド・モンティエル、元WBAチャンピオンのジョナサン・ビクター・バロス、元3階級制覇チャンピオンのリッキー・バーンズを下しております。
負けた試合は4回戦ボーイ時代とIBFタイトルマッチとなったジョシュ・ワーリントンとの敵地で迎えた5度目の防衛戦のみ。ワーリントンとの試合は激戦の末僅差判定負けとなり、ライト級にあげてからはバーンズを下してIBFランキングをかなり上げております。
多くの英国ファンから支持を集める彼の試合を楽しむために戦歴をまとめてみました!!
セルビーの来歴
セルビーは1987年生まれ。イギリス人であり、ウェールズのバリーを主戦場としているファイターです。身長174センチ、リーチは175センチと比較的恵まれた体格ですね。
セルビーにはアマチュアのキャリアは特にありません。実績なども特にはなく、プロでの叩き上げですね。ちなみにスーパーフライ級コンテンダーのアンドリュー・セルビーは弟で彼はアマチュアトップでした。
セルビーには体の弱い奥さんと娘さんがおり、奥様は心臓病だとのことです。そのためコロナウイルスが起こったときは感染してはいけないので誰よりも真面目に自宅待機してトレーニングジムにも安全が確保されるまでいかないという家族思いのファイターですね。
これまでの実績
セルビーは2008年にニューポートにてプロデビュー。6回戦でデビューして判定勝ちを飾ります。そこからセルビーは6回戦と4回戦を行って4連勝。しかし5戦目で元アマチュアトップのサミール・モウネミンに判定負け。初黒星を喫します。
そこから3か月の期間を経て再起したセルビーは以後試合間隔を数か月空けて試合を重ねます。そして2010年には初のタイトルマッチのウェールズタイトル王座決定戦でノックアウト勝ち。タイトルを獲得します。さらに2011年にはケルティックタイトルを獲得していますね。
セルビーは12戦目で大きなチャンスを迎えます。敵地となるリバプールでのコモンウェルスタイトル、イギリスチャンピオンのステファン・スミスへの挑戦です。スミスはポール、カラム、リアムのボクシング兄弟の一員で無敗。アマチュアの頃から多くの国際大会で活躍しており世界を期待されてましたな。
そして試合はセルビーが無敗のスミスをフィジカルの強さで圧倒!!重いフックと押し込んでの打ち下ろしをねじ込んで8ラウンドノックアウト勝ち。敵地で大きな勝利を挙げてタイトルを獲得、世界ランキングを手にします。
そして次戦はロンドンのヨークホールでジョン・シンプソンと対戦。シンプソンは元コモンウェルスチャンピオンでスミスと二度接戦を演じましたがセルビーは5ラウンド2分過ぎにストップ!防衛に成功します。
さらに次戦ではガーナのハードパンチャーで元WBOアフリカチャンピオンのパトリック・オキニーを5ラウンドノックアウト。パワーもついてきて自信を深めます。
そして次戦は元イギリスチャンピオンで元IBFユースチャンピオンのマーティン・リンゼイと対戦。タフなリンゼイに手を焼いたものの大差判定勝ちを収めます。
そして次戦はオーストラリアチャンピオンで無敗のコーリー・マッコネルを3ラウンドと5ラウンドにダウンさせて5ラウンドノックアウト勝ち。次戦ではルーマニアのコンテンダーでWBCインターナショナルチャンピオンのビオレル・シミオンと対戦して判定勝ち。インターナショナルチャンピオンとなります。
そしてその3か月後には当時無敗のイングランドエリアチャンピオンであるライアン・ウォルシュと対戦。アマチュアトップ相手に判定勝ちしてプロの洗礼を浴びせます。
そして4か月後には地元といえるカーディフでランドール・ムンローと対戦。ヨーロッパ王座決定戦となります。ムンローはかつて日本で西岡利晃に挑んだコンテンダーでスコット・クイッグにも挑み、3度世界タイトルマッチを経験しているベテランでしたが、セルビーはたたきつける右で6ラウンドノックアウト勝ちを収めます。
そして次戦はカーディフでWBCアメリカチャンピオンのロムロ・コアシチャと対戦。ハードパンチャーのコアシチャをさばいて判定勝ちを収めます。
そして世界タイトルマッチを待つセルビーは次戦でオーストラリアの元WBOオリエンタルチャンピオンのジョエル・ブランカ―と対戦。無敗の相手を9ラウンドノックアウト勝ちで下してついに世界タイトルマッチを迎えます。
天笠さん見上げた根性を見せる…ギレルモ・リゴンドーvs.天笠尚
世界タイトルの獲得と初期の防衛戦
セルビーは2015年についに世界初挑戦を迎えます。相手はIBF世界フェザー級チャンピオンのエフゲニー・グラドビッチ。ロンドンでの試合となります。
グラドビッチはメキシコ系ロシア人で手数がとても多いファイター型。アマチュアでもトップとして活躍しており、無敗のままIBFチャンピオンのビリー・デイブに判定勝ちしてタイトルを獲得。リマッチではノックアウトしてますね。コンテンダーのジェイソン・ペレスを引き分けで退けており5度目の防衛戦となります。ちなみに彼はコーナーでスペイン語を話しておりますね。
そして試合はセルビーが開始から打ち合いに応じるとても激しい試合に!偶然のバッティングでグラドビッチの右目上がカットして流血すると8ラウンドにドクターストップとなり勝敗は負傷判定へ!ヒット率で勝っていたセルビーがついに世界タイトルを獲得します!
チャンピオンとなったセルビーは次戦でアメリカのアリゾナ州に遠征。元3階級制覇チャンピオンでビッグネームのフェルナンド・モンティエルを迎えることになります。
モンティエルはWBOフライ級、WBOスーパーフライ級、WBC.WBOバンタム級でタイトルを獲得している3階級制覇チャンピオン。この試合に勝てば4階級制覇となり、鋭いカウンターを武器に小さな体格をカバーする一撃の強さがありますな。
キャリアの中ではイシドロ・ガルシア、ペドロ・アラカサールを下してフライ級、スーパーフライ級のタイトルを獲得。元WBAスーパーフライ級チャンピオンのマーティン・カスティーリョ、WBCバンタム級チャンピオンだった長谷川穂積、元WBAバンタム級チャンピオンのネオマール・セルメニョを下しておりますな。
負けた試合はレジェンドのマーク・ジョンソンと2階級制覇チャンピオンとなるジョニー・ゴンサレス、後にWBCスーパーバンタム級チャンピオンとなるビクター・テラサス、後に5階級制覇チャンピオンとなるノニト・ドネアで目下8連勝中ですな。
そして試合はモンティエルが前にくるもののセルビーはガードの上からのワンツーとジャブ、サイドへのステップを駆使してアウトボクシング。時には前に出てパンチを打ち込んでカットしたものの特に影響はなく敵地で大差判定勝ち。ビッグネームをレコードに加えます。
そして次戦ではロンドンでアンソニー・ジョシュアのアンダーカードに出陣。コンテンダーのエリック・ハンターを迎え撃つことになります。ハンターはオリンピック選考会に残ったこともあるエリートでテクニシャン。2度反則負けをしているラフな選手ですな。
そして試合はまさかの展開となり、セルビーが2ラウンドに左フックでキャリア初のダウンを喫する展開に!しかしハンターは7ラウンドにローブローで減点されてその後はとても採点の微妙な接戦に…判定はセルビーに微笑みましたがハンターは不服で今も自分が勝っていたと話してますな。
そしてセルビーはそのあと元WBAチャンピオンのジョナサン・ビクター・バロスとの試合の予定でしたがバロスが予備検診をクリアできずにパス。アンドニ・ガーゴとのノンタイトルマッチをクリアしております。
複数階級制覇の壁…リー・セルビーvs.フェルナンド・モンティエル
中期の防衛戦と陥落
そして3度目の防衛戦は防衛戦が流れた元WBAチャンピオンのジョナサン・ビクター・バロスと。バロスはアルゼンチンの曲者ファイターでIBF指名挑戦者。日本で細野悟を下して指名挑戦者の権利を得ましたな。
キャリアの中では後に3階級制覇チャンピオンとなるユリオルキス・ガンボアに判定負け、パナマの曲者のセレスティーノ・カバジェロと痛み分け。激闘王のミゲール・ローマンに判定勝ちしておりますが後に4階級制覇チャンピオンとなるマイキー・ガルシアにはノックアウト負けしてIBFチャンピオンだったファン・カルロス・サルガドにも判定負けしてますな。
そして試合はウェンブリーアリーナで行われてセルビーが開始からジャブとアグレッシブさと的確性でリード。12ラウンドには左フックでダウンさせて判定勝ちを収めて指名挑戦者を撃退します!
そして4ヶ月後にセルビーは4度目の防衛戦。ロンドンで無敗のエドゥアルド・ラミレスを迎えての防衛戦を行います。ラミレスはレドゥアン・バルテレミーと引き分けており、ランキングを上げてきましたな。
そして試合はラミレスがまさかのウェイトオーバー!2ポンドほどオーバーしてセルビーのみに王座がかけられた試合となりセルビーは無難にアウトボクシング。付け入る隙を与えずにジャブで顔を弾いて経験を見せての判定勝ちを収めました!
そして半年後にまたも強敵を迎えます。リーズのコンテンダーで無敗のジョシュ・ワーリントンです。ワーリントンはフェザー級としては体格が大きく、前に出てきて手数を出す馬力あふれるスタイルとアウトボクシングもできる万能型ですね!
キャリアの中ではかつてギレルモ・リゴンドーをダウンさせた天笠尚に判定勝ち。元IBFスーパーバンタム級チャンピオンのキコ・マルティネスにも判定勝ちしておりWBCインターナショナルタイトルを持っておりますね。
大きな注目を集めたこの試合はワーリントンの地元のリーズで行われ、すさまじい激戦になります。フェザー級では体格の大きく予想では有利とされたセルビーに対してワーリントンは手数で対抗。お互いに手数がやまないオールアクションのすさまじい試合となり判定は2-1の僅差でワーリントン!!無敗のまま王者に輝きました!!
セルビーはこの敗戦を受けてライト級へのムーブアップを決断。ワーリントンとのリマッチは期待されましたが実現しなかったな。
ワーリントンさん接戦に勝ち抜く…リー・セルビーvs.ジョシュ・ワーリントン
ライト級への転級
セルビーはワーリントンに敗れた後7ヶ月後にカムバック。ウェイトを一気に10ポンドほど上げてライト級としてオマール・ダグラスとのIBFインターコンチネンタル王座決定戦に挑みます。
ダグラスはアメリカのワシントン出身のハードパンチャー。コンテンダーとして世界タイトルマッチ経験者のエドナー・チェリーと元2階級制覇チャンピオンのハビエル・フォルトゥナと試合をして判定負け。NABAタイトルを獲得したことがあり、リーチが183センチですな。
ロンドンで行われたこの試合は2ラウンドと7ラウンドに頭が当たってセルビーの両目上から出血してしまうなかなか苦しい試合に。しかしセルビーは前に出てダグラスを押し込んで接戦となったものの判定勝ち。タフさを見せてライト級での世界ランキングを手にします。
そして8ヶ月後にまたセルビーはチャンスを迎えます。相手は元3階級制覇チャンピオンのリッキー・バーンズ。ライト級ノンタイトルマッチとして英国内のビッグファイトとなります。
バーンズはスーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級でタイトルを獲得したスコットランド初の3階級制覇チャンピオン。技巧派として知られており、ローマン・マルティネスやケビン・ミッチェル、元ライト級暫定チャンピオンのマイケル・カティディス、元WBAライト級チャンピオンのパウルス・モーゼスなどを下しております。
負けたのは後にパウンド・フォー・パウンドとなるテレンス・クロフォード、WBCライト級チャンピオンとなるデヤン・ツラティカニン、元WBCライト級チャンピオンのオマール・フィゲロア、元WBAライト級チャンピオンのアンソニー・クローラ、IBFスーパーライト級チャンピオンだったジュリアス・インドンゴなどですね。
そして試合はバーンズがジャブをコツコツ当ててきてセルビーが右クロスを振り抜いて前にくる展開に!かなり採点の難しい試合となりましたがアグレッシブさで勝ったセルビーが僅差判定勝ち!世界タイトルマッチへの階段を登ります。
そしてセルビーは次戦でIBF指名挑戦者決定戦としてオーストラリアのジョージ・カンボサス・ジュニアとの試合が決まります。カンボサスは元IBFチャンピオンのミッキー・ベイを下したギリシャ系でマニー・パッキャオの元スパーリングパートナーですね。
試合はセルビーの地元のロンドンで行われ、セルビーが忙しなく動いて運動量とヒット率で上回るもののカンボサスはより重いパンチを打ち込むカウンター作戦でとても採点が難しい試合に。判定は割れてカンボサスのとなりましたが少しホームのセルビーには気の毒な採点となりました!
この試合は相当接戦となったのでこの2人の顔合わせは近い将来で王座決定戦に形を変えて行われるなどもあり得ますね!
ホームでこれは気の毒…リー・セルビーvs.ジョージ・カンボサス・ジュニア
今後期待される試合
セルビーに今後期待される試合はライト級での世界タイトルマッチです。
セルビーはすでにライト級でトップコンテンダーとして地位を築いております。世界タイトルマッチにとても近いですし、ジョージ・カンボサス・ジュニアとのIBF指名挑戦者決定戦も決まってますね。
ライト級はとても多くのファイターがいて若手のIBFチャンピオンのテオフィモ・ロペス、WBCチャンピオンのデビン・ヘイニー、WBO.WBA.WBCチャンピオンのワシル・ロマチェンコ、WBCシルバーチャンピオンのライアン・ガルシア、ロンドンオリンピック金メダリストのルーク・キャンベル 、2階級制覇チャンピオンのハビエル・フォルトゥナ、WBAレギュラーチャンピオンのガーボンタ・デービスらがトップとして君臨して誰が世界チャンピオンでもおかしくないです。
セルビーはその中でも一目置かれる存在で、元4階級制覇チャンピオンのエイドリアン・ブローナーとの試合の話もあります。キャンベルとの試合になってもオールイングリッシュ対決となるので盛り上がりますね!
ターゲットになるIBFチャンピオンのテオフィモはスーパーライト級にあげそうなので王座決定戦に出る可能性も高そうですね。カンボサスとの試合がキーになるのでまずは王座への挑戦権を得たいところです。
パーフェクトなやりにくさ…キッド・ガラハドvs.クラウディオ・マレーロ
セルビーのファイトスタイル
セルビーのスタイルはめっちゃエキサイティングなゴリゴリ打ち合いに行くスタイル。常に手数が多く頭を振ってパンチを振り抜いてくるので消耗戦に強いですね。
セルビーはかなりタフで打たれてもあまり効いたそぶりを見せないです。特別なものはないのですが少しずつ前に来て相手をブレークダウンして自分のペースに引き摺り込むのが上手いボクサーですね。
また、結構なんでもできるのも特徴的でジャブをついてのアウトボクシングもできます。サイドへの動きもなかなかうまく、ボディを打ち込んでのブレークダウンもインサイドでの打ち合いも飛び抜けたものはなくても平均以上こなせる厄介なタイプです。
ライト級に上げても体の強さは健在で、どんどん打ち合いにきます。流血したとしても下がることがなく、タフな試合になればなるほど泥沼に相手を引きずり込み、判定を物にしてしまいますね。
やっぱり相性は大事やな…ジョシュ・ワーリントンvs.カール・フランプトン
まとめとセルビーの今後
いかがでしたでしょうか?相手から一歩も引かない気の強さ、ライト級でも通用するフィジカルの強さと振り抜いてくるパンチを武器とするセルビー。ライト級でもトップコンテンダーとして着々とチャンスを待っています。
ライト級としてはIBF指名挑戦者決定戦となるジョージ・カンボサス・ジュニアとの試合が決まっており、この試合に勝てばIBFチャンピオンのテオフィモ・ロペスへの指名挑戦者となります。ロペスはスーパーライト級にそのうちいきそうなので決定戦に出られそうですね!
常に激しく戦うセルビーの試合はまさに戦争。ボクシングの根底にあるような激しい打ち合いと接戦の中でもすべてを出し尽くして勝利をもぎ取ることから人気がとても高いです。ノックアウト率は低いのですがエキサイティングな試合が多いのでファンも多いですね!
ワーリントンには負けたものの将来的にはリマッチもあり得るかもしれません。4階級制覇チャンピオンのエイドリアン・ブローナーとの試合の話もあり、引く手数多と言えますよね!
ちなみにそんなセルビーの試合をテレビで見るにはWOWOWのエキサイトマッチが最適です。過去の試合もリピート放送でされていますし、以下のリンクからWOWOWを是非試してみてはいかがでしょうか?