現代を代表する軽量級ボクサーの1人で元WBA.IBF世界スーパーバンタム級タイトルを統一した経験のあるダニエル・ローマンさん。日本でも2度試合をしており派手なスタイルではないものの相手をじわじわと追い詰める頑張り屋さんなスタイルを持ちます!
止まらない前進と回転力の高い左右フックのコンビネーションを軸とするローマンのスタイルはまさに木こり職人のよう。一撃で相手を倒すようなパワーはないものの顔面とボディにコンビネーションを出してじわじわと相手を削って最後に倒してしまう頑張り屋さんなスタイルですね!
すでに4度の防衛に成功したローマンはキャリアの中で敵地日本に乗り込んでネオマール・セルメニョを破った久保隼の地元の神戸で久保をノックアウトしてWBA王座を獲得。初防衛戦では長身の松本亮を相手に2度目の来日を聖地の後楽園ホールで行って何もさせないまま回転の高いコンビネーションで押し切り大差判定勝ち。さらに元WBAスーパーば暫定王者のモイセス・フローレスとアメリカで対戦してフローレスのパンチはダッキングでかわして完璧な判定勝ち、かつてレイ・バルガスと対戦したギャビン・マクドネルをアメリカにて初のKO負けをなすりつけての勝利。2019年にはIBF王者だったTJ・ドヘニーとの統一戦を地元のロサンゼルスで行って2度ダウンさせた末に判定勝ちで世界タイトルを統一しています!
しかし5度目の防衛戦で負傷からの復帰戦となったムロジョン・アクマダリエフ戦で大接戦の末に僅差判定負けで王座陥落。しかし評価は落としておらずまだまだ巻き返しが期待されています。
しかしそんな彼は大きな悩みがあります。それは元統一王者なのにやたらと影が薄いこと…そのファイトスタイルは派手ではないため印象に残りにくいのか多くのエキスパートやファンの間でも思うように評価されない不遇の選手。統一王者なのにまだ世界タイトルを獲得してなかったデビン・ヘイニーのセミファイナルで防衛戦を組まれかけましたからね…怪我で流れたけど。
最近ではスーパーバンタム級はあまり人気のない階級になってますがその中でも抜群の実績を持つ彼の戦歴をまとめてみました!!
顔色ひとつ変えないキューバのジャッカル…ギレルモ・リゴンドー!
Contents
ローマンの戦歴
ローマンのプロフィール
ダニエル・ローマンは1990年生まれの29歳。アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスの出身で現在もロサンゼルス在住。ドへニ―との試合ではロサンゼルスのフォーラムで行われるなどボクシングの聖地として知られる地ですな。
ローマンはアマチュアの頃の実績が特にないプロのたたき上げの選手です。相手を押し込むようなスタイルから間合いをとって飛び込むスタイルまで幅広く試合を展開させる姿はセンスがあるというより努力の結晶ですね。
異名は”baby faced assassin"。童顔の暗殺者を意味するニックネームであり、かつて3階級制覇王者でメキシカンレジェンドのマルコ・アントニオ・バレラと同じニックネームですね!
地獄のような試合やったな…エマヌエル・ナバレッテvs.アイザック・ドグボエ2 試合後のコメントもあり!
これまでの実績
ローマンは2010年に20歳でプロデビュー。この年齢でのデビューは16歳などでデビューする選手が多いメキシコ系のファイターと比べて比較的遅いデビューであり、ローマンがボクシングを始めたのも比較的遅いタイミングだったことがわかりますね!
そんなローマンはデビューから3試合目でいきなり黒星、4ラウンド判定負けを喫してしまいます。ちなみにこの時の相手は岡田隆司で現在はすでに引退していますね。ローマンは日本で世界タイトルを獲得してるので日本と縁が深いようです。
その後ローマンはメキシコでの試合を挟みながら6連勝。6回戦に昇格して次戦で8回戦に挑みましたがここでは判定負け。経験のなさをつかれての敗戦となりキャリア2敗目。ここまでのレコードを見るとエリートであるとは言えませんね。。。
その後は6回戦に1度戻って8回戦にて初勝利。8回戦で6連勝を飾ってついに10回戦までこぎつけます。初めての10回戦は2015年に後に2階級制覇王者となる亀田和毅やWBAフェザー級暫定王者となるロニー・リオスと対戦するダニエル・ノリエガと対戦。空位のNABAタイトルがかけられたこの試合で判定勝ち。タイトルを獲得して世界ランキングを獲得します!
そしてその後は後にWBOスーパーバンタム級王者となるジェシー・マグダレノや後にWBA世界フェザー級暫定王座を争うディエゴ・デラホーヤ、元WBA世界スーパーバンタム級王者のリコ・ラモスと対戦するエリック・ルイスに判定勝ち。防衛に成功します。
そしてジョセフ・ディアスやディエゴ・デラホーヤに負けているラミロ・ロブレス、かつて日本で山中慎介とWBCバンタム級王座を争ったクリスチャン・エスキベルを下して防衛。さらに無敗の強打者であるマーロン・オレアを判定で下します。
そしてここでローマンにビッグチャンス。ここまで無敗で将来の世界王者候補と目されていたアダム・ロペスとの試合です。この試合はノンタイトル12回戦で行われWBA世界スーパーバンタム級指名挑戦者決定戦。ローマンは圧倒的に不利予想でしたがローマンは絶え間ないコンビネーションでロペスを4ラウンドに2度ダウンさせるとその後も一方的に試合を進めてロペスは9ラウンド終了後に棄権。ローマンが指名挑戦者となります!!
長谷川さんマルチネスにボコられる…キコ・マルチネスvs.長谷川穂積
日本でのスーパーバンタム級タイトル獲得と日本での防衛
ローマンは2017年9月に適地となる日本で世界初挑戦。相手は王者の久保隼でこれが初防衛戦。久保の地元の神戸で行われることになります。久保はサウスポーのアウトボクサーで長谷川穂積を輩出した真正ジムの所属。2階級制覇王者のネオマール・セルメニョを棄権させて王座を獲得しましたな。
この試合は久保が有利とみられていましたがローマンがその予想をまたも覆します。開始からガンガン前に出ると久保をダウンさせて全くポイントを与えないコンビネーションで9ラウンドに久保をストップ!!敵地で最高のパフォーマンスを行い世界タイトルまで到達しました!!
そして半年後ローマンは日本に初防衛戦で戻ってきます。相手は長身の強打者である松本亮。この試合は聖地である後楽園ホールで行われます。松本は身長176センチを持つ破格の長身選手。元スーパーフライ級OPBF王者で減量の苦しさから2階級飛び越えてきましたね。
そしてこの試合はまたもローマンの独壇場になります。松本の長いリーチをくぐりながら接近するとコンビネーションをボディ中心に放って回転力と手数で圧倒!松本を釘付けにしてしまい大差の判定勝ちで初防衛を終えます。
松本さんローマンの前に削られて終わる…ダニエル・ローマンvs.松本亮
アメリカでの防衛戦
日本での2試合の防衛戦を終えたローマンはホームであるアメリカに帰ってくることになります。そして3度目の防衛戦の相手は元WBAスーパーバンタム級暫定王者で無敗のモイセス・フローレスに決定!フローレスは175センチの長身を持つパンチャーでキャリアの中で2階級制覇王者であるオスカー・エスカンドンを下して王座獲得。敵地ナミビアで元WBOバンタム級王者のパウルス・アンブンダを下してIBOタイトルを獲得してきた強敵です。前回の試合ではギレルモ・リゴンドーに初回終了後にパンチをもらってノーコンテストになりましたな。
そしてカリフォルニア州で行われたこの試合はフローレスがウェイトオーバー!しかしローマンはウェイトの重いフローレスのリーチをダッキングでくぐってボディ、顔面と打ち分けてインサイドに入る出入りに激しいボクシングでアウトポイント!大差判定でフローレスに初黒星をつけます!
そしてローマンはこの試合の後エディ・ハーンと契約。DAZNをホームとして試合を行うことになりアクティブに試合をだんだんと行うようになります。まぁセミファイナルばっかりなのは置いといてですがね。。。
ローマンは3度目の防衛戦ではシカゴに登場。かつてWBC王座をレイ・バルガスと争って敗れたギャビン・マクドネルを迎えます。マクドネルは元IBF、WBAバンタム級王者のジェイミー・マクドネルの弟で177センチの長身を持つアウトボクサー。バルガスに敗れた後元IBFバンタム級王者のスチュアート・ホールに判定勝ち、WBAスーパーフライ級チャンピオンのカル・ヤファイの弟のガマル・ヤファイを判定で下してWBCインターナショナル王座を獲得していましたな。
そしてこの試合はかなりの激闘になります。間合いを取りたいマクドネルに対してガンガン前に出るローマンは前半戦をプレッシャーをかけてリード。マクドネルはボディを効かされながらも中盤うまくアウトボクシングして試合は接戦になります。しかしローマンは10ラウンドに一気に圧力を強めて疲れの見えるマクドネルはダウン!そのままストップに持ち込んでチャンピオンとしての戦い方を見せています!
マクドネルさん充実のローマンに屈する…ダニエル・ローマンvs.ギャビン・マクドネル
ドヘニーとの統一戦
ローマンは2019年についにビッグファイトを引き当てます。その試合はIBFスーパーバンタム級チャンピオンのTJ・ドヘニーとの統一戦です。
ドヘニーはここまで無敗のチャンピオン。サウスポーの強打者でアマチュアとして長くのキャリアを誇る選手です。アイルランド系なのですがオーストラリアを主戦場としており全ての試合に勝利してきているパワーパンチャーですね!
キャリアの中では日本に来日してセンス抜群のサウスポーである岩佐亮佑を判定で下して王座を獲得。初防衛戦まで期間が空いてしまったもののアメリカのニューヨークで日本の高橋竜平と対戦。強打でダウンさせて11ラウンドにTKO勝ち。ノーダメージで切り抜けており統一戦を迎えましたな。
お互いにトラッシュトークなどがないリスペクト溢れる試合となりましたがこの試合はローマンの地元のカリフォルニアのロサンゼルスで行われます。試合ではローマンがドヘニーを前半にダウンさせてそこからガンガン攻め入ってリードします。中盤はドヘニーのフックで効いてしまう場面もありましたが11ラウンドに逆にボディでダウンさせてノックアウト寸前まで追い込む激戦の末に判定勝ち。見事に赤のベルトをコレクションに加えてドヘニーに初黒星を与えました!
そして統一王者となったローマンはWBA指名挑戦者でもとトップアマのムロジョン・アクマダリエフとの試合が9月にニューヨーク、デビン・ヘイニーの初めての世界挑戦の前座で決まります。統一王者なのに…
しかしローマンは肩を負傷して試合前に離脱。年内には復帰できる見込みとのことでアクマダリエフ戦を乗り越えることができたらIBF指名挑戦者で暫定チャンピオン、元王者の岩佐亮佑が控えておりますのでなかなかタフな防衛ロードが待っておりますな。
激闘だけどやっぱスケール小さい…ダニエル・ローマンvs.TJ・ドヘニー試合後のコメントもあり!
アクマダリエフ戦と陥落
ローマンは肩の負傷から戦列に復帰して2020年1月30日のフロリダ州マイアミにてアクマダリエフとの防衛戦を行うことをアナウンス。デメトリアス・アンドラーデ、テビン・ファーマーの前座ですが、スーパーボウルの週末になるので落とせない試合になりますね!この試合に勝てばIBF暫定チャンピオンになった岩佐亮佑との試合が予想されていましたな
しかしローマンはこの試合で無念の陥落。試合はアクマダリエフが前半をその強烈なパワーでローマンを押し込んで徐々に体がほぐれてきたローマンがアクマダリエフを中盤リード。終盤はお互いに譲らない試合となり、個人的には中盤を支配したローマンが逃げ切ったかと思いましたが2-1の判定はアクマダリエフへ。ローマンは王座陥落となりましたな。
アクマダリエフさん接戦の末ウズベキスタンの歴史に名を刻む…ダニエル・ローマンvs.ムロジョン・アクマダリエフ
そしてローマンはこの後マッチルームと契約を解除。PBCと契約してWBCスーパーバンタム級指名挑戦者決定戦のトーナメントに出ることが決定しています。相手は元WBAバンタム級スーパーチャンピオンのファン・カルロス・パヤノですね。
パヤノはドミニカ共和国のアマチュアトップでで2度オリンピックに出ているテクニシャン。長期政権となっていたアンセルモ・モレノに負傷判定勝ちしており、3度オリンピックに出たルーシー・ウォーレンと2度試合をしてリマッチで敗退。その後はWBSSトーナメントで井上尚弥に初回70秒で失神ノックアウトされて、元WBCバンタム級チャンピオンのルイス・ネリに9ラウンドボディでノックアウトされちゃいましたね。
そして試合は開始からアグレッシブにくるパヤノにローマンがプレッシャーをあっけて手数で押す展開に。クリーンヒットはパヤノの方が多くてなかなか採点の難しい試合となりましたが手数で押し切ったローマンが判定勝ちを収めました!!
永遠に地味…ダニエル・ローマンvs.ファン・カルロス・パヤノ
そして次戦ではコンテンダーでハードパンチャーのリカルド・エスピノサと対戦。エスピノサは1997年生まれの23歳。メキシコのティファナ出身で21歳ながら25戦のキャリアを誇りWBOラティノ王座を獲得してきた強打のファイターです。
ここまでの戦績は25勝21KO3敗。最長ラウンドは10ラウンドで前回の試合でコンテンダーのリカルド・ヌネスと対戦して10ラウンドKO勝ち。
2年前にジョン・リル・カシメロとWBOバンタム級暫定王座決定戦で対戦したものの再三ダウンさせられてノックアウト負け。しかし無敗のブランドン・バルデスを下してきましたな。
戦績が示す通りの強打を生かした選手でガードを高く上げて相手も間合いを取り思い切りの左フック、ワンツーを叩きつけてくるスタイル。接近戦で放つ左右ボディはかなり力感があり一撃で倒すというよりは削ることが多い。
そしてこの試合はエスピノサが開始からガンガン出てきて振り回してくる展開に!ローマンはクレバーに下がってボディとワンツー、アッパーを駆使して的確に射抜いてエスピノサの唇をカットさせるなどアウトボクシングし、大差判定勝ちを収めました!
予想通りの想定男…ダニエル・ローマンvs.リカルド・エスピノサ
今後期待される試合
ローマンに今後期待される試合は王座返り咲きをかけた試合です!
スーパーバンタム級ではWBA.IBF統一王者であったローマンと並ぶ長期政権を誇るWBC王者のレイ・バルガスがおります。彼は試合内容がつまらないことでメディアに酷評されておりますが亀田和毅との試合の後にローマンとの試合を求めておりプラットフォームも同じDAZNであることから可能性はあると思います!
さらにWBO王者にエマヌエル・ナバレッテがおり彼は階級最強とされてきたアイザック・ドグボエに2連勝してきたメキシカン。他にもWBA暫定王者にはイケメンで自身と引けを取らない体格を持つブランドン・フィゲロアもおりますね。そしてWBC指名挑戦者には元WBA.WBO統一王者としてそのつまらない試合ぶりから世界を落胆させてきたギレルモ・リゴンドーがおり、ローマンを破ったアクマダリエフとのリマッチの可能性も大いにあります。
さらに1つ下の階級のバンタム級にはWBA.IBFバンタム級統一王者でパウンド・フォー・パウンドのランキングにも入る井上尚弥がおります。元5階級制覇チャンピオンのノニト・ドネアなどもおり彼らのスーパーバンタム級参戦は時間の問題かなと思います。2つのベルトを保持しているローマンは実績がありますので今後のパフォーマンスがビッグファイトを引き当てるために大切になりますね!
ローマンのファイトスタイル
ローマンのスタイルはとにかく頑張るスタイル。アウトボクシングをするわけではなくガードを固めて相手と間合いを詰めるとコンビネーションを出してコツコツとパンチを当てて相手を削るボクシングです。
また、背の高い相手に対してくっつくだけでなくフローレスのように振り回してくる相手にはダッキングして自分のパンチを当ててはすぐに離れるなど器用さも持ち合わせます。特別なパワーもスピードもないのですが豊富な練習量がよくわかる頑張り屋さんのボクシングですね。
またこの人はめちゃくちゃ打たれ強いです。ドヘニーとの試合ではドヘニーのパワーの前に効いたシーンもありスタミナも苦しくなってましたが耐え切っています。しかもそこからまたダウンを奪うなど気の強さはかなり上だと思いますね!
ファイトスタイル的にあまりきらびやかな魅力を振りまくようなタイプではないのですが強さは一流。評価はされにくいタイプなんですけどボクシングファンの人から見たら多くのボクサーが目指すべき姿なんだと思いますね!
亀田和毅さんマクドネルに惜敗してしまう…ジェイミー・マクドネルvs.亀田和毅1
まとめとローマンの今後
いかがでしたでしょうか?特別な才能は全くないですし特別なパワーやスピード、華麗なテクニックがあるわけでもないけどとにかくやれることは最大限やってくる頑張り屋さんのローマン。彼のボクシングはとても応援したくなるようなものですね!
今後はスーパーバンタム級にてタイトルマッチを望んでおりますし、一番の希望はWBC王者のレイ・バルガス。これがかなわなくともローマンには敗れたムロジョン・アクマダリエフとWBAレギュラー王者のブランドン・フィゲロア、WBO王者のエマヌエル・ナバレッテとの対戦のチャンスがあります!
いつも強い対戦相手と対戦しながらもガンガン前に出て止まらないコンビネーションと徹底的に相手を研究してきて最適解をリングで出してくるローマンのボクシングは強いです。なかなか崩せる選手ではないですしこの人の強さはメンタルと最高のパフォーマンスするための準備に余念がない慎重さですね!
そんなローマンの試合を含めた海外ボクシングの試合をテレビで見るにはWOWOWのエキサイトマッチが最適です。過去の試合もリピート放送でされていますし、以下のリンクからWOWOWを是非試してみてはいかがでしょうか?